消費者運動には、長い歴史があり政治やイデオロギーに利用されてきたのが現実であろう。消費者団体も現在においてもいイデオロギー系政治色の強い団体や企業、産業界が発起して設立された財団が消費者団体として闊歩している。我が国の消費者運動、あるいは消費者団体は、消費者あるいは生活者のための団体ではなく、活動の目的は他にあり、企業防衛のためであったり政治活動のためであることが多いことは残念である。本来は消費者の自主による消費者運動でなければならないはずであるが程遠い感を拭いえない。
一方、消費者主権が叫ばれて久しいが、我々は、権利には必ず義務が伴うものであると考え、消費者主権と同時に消費者義務も同時に考え提唱して行きたいと考える。例えば、人体に害のある商品または地球環境に害を与える商品が販売されたときに、もし消費者が購入しなければ企業は生産も販売もしない。企業に消費者主権を訴えて良い商品、良い役務提供を求めると同時に、悪い商品、役務を購入しない消費者としての義務の履行が最重要と考えるのである。欧米においては既に消費者の義務の履行が主張されているが、この点においても我が国は大きな後れを取っていると言える。いずれにしても消費者とは人類すべてを指すと言えるのであるから、人であるのなら消費者として良い商品、良い役務を企業が提供するように監視するのも消費者の大きな義務であろう。
我々は、人類の未来のためにどのような消費生活をすべきか、どのような消費者運動をすべきかを考え、消費生活は常に地球環境と共にあることも認識しながら、消費生活のあるべき姿を考えたいと思う。
我々は、そんな我が国の消費者運動または消費者問題に鑑み、政治的に中立で特定の企業に傾かない消費生活学の研究を行い、消費生活者のための企業の姿勢、行政の姿勢がどうあるべきかを含めて消費生活学を学際的学問として研究し、消費生活学の学問体系の確立を目指したいと考える。
令和2年4月1日
日本消費生活学会 発起幹事団体一同